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Ｓｉｄｅ B
太陽や、各星々が発している電波・光の波をシンセサイザーの音源として使用したという作品。
ドーンコーラス(暁の合唱)とは、地球をとりまく磁気圏を、太陽から飛び出してくる微粒子が振動させ、「ピューイピューイ」という音を発生させるもの、という事です。
このアルバムの冒頭には、その音が一切加工せず使用されています。
レコードには「鳥の鳴き声のようだ」と書かれていますが、私にはどららかというとカエルの大合唱に聞こえます。
このほか、各星からの電波や光波曲線を、シンセサイザーの音源として使用しています
こういう発想はまず普通の人は考え付かないでしょう。考えついたとしても、音楽作品として成立させるまで到る人はいないと思います。やはり、音楽と科学技術双方に長けている冨田氏でなければ存在しえなかった作品と言えます。
各星からの、どんな波をいかにしてどのような音にしたか、ここでも紹介したいと思ったのですが、かなり複雑で、ちょっと紹介しきれるものではありません。詳しい内容はレコード(CD化もされています)に書かれていますので、是非そちらを参照して頂きたいと思っております。各星からの波形も掲載されています。
さて、このアルバムに納められた曲についての解説が、レコードにはほとんど書かれていませんので、私の知っている範囲でコメントしたいと思います。
レコードのＡ面は、「ヴィラ＝ロボス」の作品集、レコードのＢ面はバロック３曲とロシアのラフマニノフの作品１曲で構成されています。
ＳＩＤＥ Ａ
ヴィラ=ロボスの作品集
ヴィラ=ロボスとは、近代ブラジルの作曲家で、ここに収められている「ブラジル風バッハ」が代表的な作品です。このほかにすぐれたギター曲を残しています。12の練習曲と、5つの前奏曲は、クラシックギターを習う人はかならず一度は通る道となっていて、私もこれらの曲集は練習いたしました
ブラジル風バッハ(第5番)には、特に有名な「アリア」がありますが、残念ながらこの曲集には収録されていませんでした。
さて、ヴィラ=ロボスという人はブラジル人なのですが、フランスで音楽の勉強をしたのだそうです。しかも、ドイツのバッハをもっとも敬愛していたのだそうで、彼の曲はブラジルとフランスと、さらにバッハもミックスされたような独特な雰囲気があります。
ヴィラ=ロボスはバッハの平均律クラヴィーア曲集からの編曲作品を発表しており、第1番ハ長調のフーガをチェロ合奏に編曲した作品も聞いた事があります。音譜自体は全く変えていないのに、オリジナルとは違ったロマンチックイメージになっていました。
ＳＩＤＥ Ｂ
さて、「星からの音」との事ですが、星からの波を音に変換してしまうと、結局普通のデジタルシンセの音とあまり変わらなくなってしまうのがちょっと歯がゆいところだ、というようなコメントを、のちに冨田氏が何かで言っていました。でも南極に何万年も前から眠っていた氷で、オンザロック飲むようなもので、夢があるではないか、とも言っておりました。
この作品では、カシオの協力で「カシオ・コスモシンセサイザー」が使用されているらしいです。このコスモシンセサイザーとは、商品化はされていないのですが、一種のデジタルシンセで、サンプリングもかのうですが、波形を手で書いて音源にする事も可能なもののようでした。
冨田氏が星の光波曲線を入力するのに、タブレットを使用して、なんと手で曲線をなぞって入力しているところを、何かで見た記憶があります。
このアルバムは、トミタシンセサイザー、アナログ盤の最後の作品となりました。(次回のベスト盤、スペース・ウォークを除く)
時代もすでにアナログデジタルシンセに変わりつつありました。このあとから、冨田氏はシンセサイザーのクラシック作品、をあまり作品を発表しなくなってしまいました。
(壮大なコンサートの模様を収めたＣＤなどは発表しています。）
もう、自分の役割はある程度果たしてしまった、と思ったのかも知れませんね。本当に、冨田氏がいなければ今のシンセサイザー音楽は存在しなかったと思います。
冨田氏はこのほかにも、ストラヴィンスキーの「春の祭典」や、リムスキーコルサコフの「シェーラザード」も企画したようなのですが、一部を除いてまだ実現していません。いつか、トミタ版のこれらの曲も聞ける事を望んでいます。
1998/01/18