ラヴェル＝冨田勲

Ｓｉｄｅ　Ａ

「ダフニスとクロエ」組曲第２番
　夜明け〜無言劇〜全員の踊り

亡き王女のためのパヴァーヌ

Ｓｉｄｅ　Ｂ

ボレロ

組曲「マ・メール・ロア」
　眠りの森の美女のパヴァーヌ
　夜の森に迷った一寸法師
　パゴダの女王レドロネット
　美女と野獣の対話
　妖精の園

「惑星」「宇宙幻想」「バミューダ・トライアングル」と、トミタサウンドはますます宇宙の彼方に遠ざかるばかり。このまま宇宙の果てまで到達してしまうのか・・・・
と思っら、このレコードで再び「月の光」の原点に帰って来た。
ドビュッシーと並んで近代フランス音楽を代表する、ラヴェルの作品を冨田化した作品です。
トミタサウンドの「美しさ」をもっとも感じさせる作品と言えます。

「ダフニスとクロエ」第２組曲

この曲は実は「展覧会の絵」の次の、第３作目として考えられていたそうです。しかし、デモ作品をレコード会社に提示したところ、「あまりシンセサイザーっぽい音してないじゃないか！」と言われたり、まだ音楽用のコンピュータが登場していないこの頃では、手間がかかりすぎて結局その時は実現しなかった、とのエピソードが残っています。

「夜明け」では、フルートで表現している鳥の鳴き声が、本当の鳥っぽい音になっていたりします。

「無言劇」は、なぜか東洋的な響きも感じられます。

「全員の踊り」はちょっとロックのようなリズムやサウンドが取り入れられています。

亡き王女のためのパヴァーヌ」

ラベルのピアノ曲で、ラベル自信もオーケストラ編曲版を出しています。この冨田版では、冒頭柔らかいオルガンの音が、はるか彼方から聞こえてきます。そしてメロトロンのコーラスに続きます。中間部は、なぜかペルーの響きが・・・（余談ではあるが、これよりずっとのち、冨田氏はペルーのクシヤクタというグループと競演したりする）。最後の部分では打楽器の音が入り、原曲とはちょっと違うイメージになっていますが、これもまたいいのです。

ボレロ

冨田勲以前にも、「スイッチト・オン・ボレロ」という、モーグシンセサイザー版ボレロが出ているのですが、冨田版はまた違う、洗練されたイメージになっています。私など、これは宇宙人が近代文明の発達した地球にやってきて演奏しているボレロの様に聞こえてしまいます。人間の作った一定のリズムに、なんとか宇宙人が会わせて演奏してくれるのですが、最後は結局この単調さに我慢できなくなり、人間のリズムを逸脱し、そのまま回転するＵＦＯとなって宇宙の彼方に飛び去っていってしまうのです。

組曲「マ・メール・ロア」

これはシンセサイザーで綴った”おとぎ話”です。

この音の美しさをどう表現したらいいのだろう。これは「音楽」さえも越え、音そのものが心に入ってくるような感覚を覚えます。

「パゴダの女王レドロネット」はトミタサウンドのユーモラスな面が出ている楽しい作品です。元々中国風の音楽なのですが、冨田勲により、さらに新しい新鮮な中国風サウンドになっています。「ドラ」の音も、サンプリングという手法がなかった当時、モーグシンセサイザーとテープによる多重録音で作り出したものとの事です。

圧巻は最後の「妖精の園」でしょう。このような音を表現できるのは、やはり冨田氏以外には存在していないと思います。

1997.09.21

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